糖尿病を防ぐための
〝脱〟糖質依存
さまざまな"依存症"があるなかで誰にでも起こりうる一つが、「糖質依存」です。「なんとなく体がだるい」「イライラすると甘いものが欲しくなる」というときは要注意。危険な糖質依存に陥らないためのポイントを専門家に解説していただきます。
食後のイライラ、眠気……糖質の摂り過ぎが原因かも
糖質とはタンパク質、脂質と共に三大栄養素の一つであり、炭水化物の一部のこと。糖質は体内でブドウ糖に分解され、体を動かすためのエネルギー源になります。そのため糖質をまったく摂取しないと体や脳がエネルギー不足になり、集中力や思考力が低下したり体力が落ちたりするだけでなく、頭痛やふらつきなどが起こります。
一方で、糖質を摂り過ぎるのはとても危険。過剰摂取はやがて依存となり、「甘いものを摂取しないとイライラする」「甘いものが手放せなくなる」という中毒に陥ることがあるのです。

糖尿病のリスクを高める「血糖値スパイク」に要注意
糖質を摂ると血液中のブドウ糖濃度が上昇。この濃度のことを血糖値といい、これが上がると膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値を下げようとします。健康な人は血糖値の上昇が穏やかでスムーズに平常値へ戻りますが、糖質依存の人の場合、食後に血糖値が急上昇したあと、まるでジェットコースターのように急降下します。この血糖値の急変動を「血糖値スパイク」といいます。
糖質依存の人は一日に糖質を摂取する回数が多いので、血糖値スパイクが幾度となく起こります。血糖値が急降下することで体内は低血糖の状態になり、イライラしたり集中力が低下したりといったことが繰り返されます。
注意しておきたいのは、血糖値スパイクが続くと、血糖値が戻りにくく高い状態が維持されることで、糖尿病になってしまうこと。
また、血糖値の乱高下で血管が傷つき、ボロボロになっていきます。その結果、次第に動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞を発症するリスクも高くなります。
しかし、恐ろしいことに、糖質依存は通常の血液検査では発見されにくいのです。なぜかというと、一般的な血液検査は空腹時の血糖値を測定するものであり、食後に血糖値スパイクが起きていても見過ごされる可能性が高いから。そのため、自分でも気付かないうちに糖質依存だったということが多いのです。
一時的な快感を求める糖質依存のメカニズム
ドーパミンは快感や多幸感を得られるホルモン。糖質を摂ることで分泌されると、一時的に快感を得られますが、長く続きません。しばらくすると血糖値は下がり、ドーパミンの分泌量も低下します。低血糖という緊急事態を回復するためにアドレナリンが放出され、強烈にイライラしてきます。その結果、「もっと快感が欲しい!」と糖質依存になっていくのです。
糖質依存の怖いところは、糖質の量が次第に増えていくということ。最初はチョコレート1かけで満足していたのが、次第に1枚食べないと満足できなくなり、やがて数枚食べないとイライラが止まらなくなるなど、脳からの欲求はどんどん大きくなります。欲求のまま食べ
続けると血糖値スパイクがますます激しくなるだけでなく、肥満や糖尿病、心疾患などにつながってしまうでしょう。
こうした糖質依存の原因は、ストレスだといわれています。「甘いものを食べてストレスを発散する」という経験は誰もが持っているかもしれません。たまにそのような行動に走るのは、特に問題ではありません。怖いのは、「甘いものを食べて快楽を得る」ということが
習慣化されることなのです。食べること以外でのストレス発散方法を見つけておくといいでしょう。
“脱”糖質依存の鍵は食生活の見直し
糖質依存を改善するためには食事、運動、睡眠など、生活習慣全体の見直しが必要です。なかでも、特に大事なのは食事。運動にも血糖値スパイクを改善する効果がありますが、「糖質の過剰摂取」という根本的な原因を改めない限りは、本質的な解決になりません。その
ため、糖質依存を改善するには、食生活を見直すことが不可欠です。
まずは間食をやめること。糖質依存の人は間食が多い傾向があり、「間食をやめるだけで糖質の摂取量を基準の範囲内に抑えられる」という研究報告もあります。そのため、まずは間食を減らす努力をしてみましょう。どうしても口がさみしくなったらヨーグルトやチーズなどの乳製品や、サラダチキンを摂るのがおすすめ。これらには糖質がほぼ含まれておらず、代わりにタンパク質が豊富に含まれているので、体に良い作用があります。その他、ナッツや少量の果物もいいでしょう。
次に、普段の飲み物をお茶やブラックコーヒーなど無糖のものに変えましょう。特にジュースや甘い炭酸飲料を常飲している人は要注意。これらには想像以上に多くの砂糖が含まれています。「ケーキやお菓子はあまり食べないから、自分は糖質依存ではない」と思っていても、実は飲み物で糖質依存に陥っていることは少なくありません。
そして、食事の順番を見直すことも必要です。糖質依存は血糖値の乱高下が原因ですから、血糖値を上昇させない食べ方をすることが大切。食事をするときにはまず野菜やタンパク質のおかずから食べ始め、ご飯やパンは最後に食べるというスタイルが適しています。

幸せホルモン「オキシトシン」で甘いものへの欲を抑制
“脱”糖質依存を図るのに、頼もしい味方がいます。それは「オキシトシン」というホルモンです。オキシトシンはドーパミンと同じく脳のなかで分泌され、「幸せホルモン」や「愛情ホルモン」とも呼ばれます。オキシトシンにはストレスを緩和したり、甘いものの摂取を抑制したりする働きがあります。実際、人を対象にした研究により、オキシトシンを投与すると、チョコレートやクッキーの摂取が抑制されることが分かっています。
オキシトシンを増やすには、スキンシップをする、音楽を聞くなどさまざまな方法があります。ただし、その効果は一時的であるため、日常的にこまめにオキシトシンを増やす機会を設けることが大切。ぜひオキシトシンの力を活用して、“脱”糖質依存を目指してみましょう。

自分の生活を振り返り糖質の過剰摂取は控える
砂糖は「マイルドドラッグ」とも呼ばれており、薬物やアルコールと同様の中毒性があるといわれています。知らないうちに糖質依存が進行し、いつのまにか糖尿病を発症していたということは、決して珍しくありません。
これまでの習慣を改めるにはまず、自分の生活を振り返ってみること。一日に摂取した甘いものやジュースの量などを書き出してみると、改善のヒントが見えてくるかもしれません。
※この記事内容は、執筆時点2025年6月30日のものです。







